怖いクリスマス・イブ

今日はクリスマスイブ、外は冷たい雨が降ってる・・
昭和の歌のように夜更け過ぎには雪へと変わるのだろうか。。。

 

昔、家族でカラオケに出かけると、よく父は山下達郎の『クリスマス・イブ』を歌っていた。

「きっと君は来ない~ひとりきりのクリスマスイブ♪ Oh~♪」

と明るく歌う父に、母はタンバリン、子供の私はマラカスを両手に持って、みんなでノリノリでカラオケパーティをしたものだった。

 

「今夜はクリスマスイブだというのに、実家に帰ってくるなんて・・新婚なのに大丈夫なの?」

母が手際よく料理の支度をしながら私に言った。

「仕方ないじゃない、旦那様は本社の大阪に出張なんだから・・それより私も何か手伝おうか?」

「いいわよ、新米主婦さんは実家にいる時くらい気楽にしていなさい。」

母の言葉に涙が出るほど嬉しく思った。主婦業がこんなに大変だとは思っていなかった。この上、子供が生まれた暁にはどうなるのだろうか。
いやいや・・子供はもっと先にしよう、今は絶対無理!!

「でも孫の顔は早めに見せてよね!」

母は私の考えを見透かしたように釘をさす。

 

――ピンポーン

「あ、お父さん帰ってきたようね。私がカギを開けてくるよ。」

「お父さん、おかえりなさーい。」

玄関を開けながら父を迎え入れると、

「E美、来てたのか?」

「こんばんはぁ~お邪魔しますぅ~クリスマスイブの夜に押しかけちゃって、ごめんなさぁ~い。」

父に続いて知らない小柄なおじさんが入ってきた。が、喋り方が微妙におかしい。

「この前父さん、間違えて傘を持ち帰ってしまってな・・」

「E美ー、お客様?上がっていただいて、母さん今手が離せないの。」

廊下の向こうから母が声をかける。
私はおじさんがたたみかけた傘の柄に気がついた。表側は濃紺一色だが内側は派手な薔薇の模様が描かれていた。

おじさんを居間に案内して、私は母に駆け寄った。

「ねえねえ、内側が薔薇の模様の傘って、この前お父さんが持ち帰った傘だったよね?」

と声をひそめて聞くと

「そうよ~電車の中で間違えて持ち帰ったみたいだ、ってお父さん、それから毎日持ち歩いていたのよ。高い傘だろうから返さなきゃって言って・・え?」

「うんうん、その傘の持ち主が見つかったみたいよ。」

母と2人で意気投合している父とおじさんを眺めた。
父はビールを勧めようとしているところだ。おじさんのグラスを持つ手の小指がピンッと立っていた。
母は何事もなかったように揚げ物をあげ始めた。私は洗面所に避難して声をころして笑った。

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数日前、母は電話で

「E美、母さんこの歳になって父さんに浮気されているのかもしれない。」

とため息まじりに話していた。父に女性の影があると言うのだ。
何事にも陽気な両親に降ってわいた危機(?)に、半年前に結婚して家を出たばかりの私はおおいに驚いたのだった。

「良かったね、お母さん。」

「・・・ん?でも危機は本当に去ったの?」

居間からは、お父さんの快活な笑いと突然の訪問者、おじさんのホホホ・・という笑いが聞こえてくるのだった。

 

怖いクリスマス・イブ おわり

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

突然ですが小話でした~(;・∀・)

このお話は去年書いた話の続きみたいな感じです。あるようでない?家族のひとコマでした~

もちろんフィクションですよ!

E美って誰~?

 

前回のお話はSさんの企画に乗ったのですが、Sさんの元のお話とはまーったく違う話だったので、続きを書いてみました(^^;)

前回のお話はこちらです ↓↓

x-note.hatenablog.com

 

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

/りお